ある弁護士の独言(a lawyer’s soliloquy)

弁護士20年、人生ウン十年、少しお伝えしたいことがあり…

賃貸借の敷金(保証金)はどれくらい返してもらえるの?

 例えば、建物の賃貸借で<敷金(賃料の)5か月分、解約引き(同)3か月分>で借りた場合、契約終了時にどれくらいの敷金が返ってくるかを考えてみましょう。

 この問題は、弁護士にご相談いただく前に、まずご自身で交渉していただき、それでもご不満な場合には弁護士に相談する、としていただければよいと思いますので(通常、家主さんが敷金を返せなくなる危険は少ないからです。)、本稿に目を通していただく意味は大きいかと思います。

 まず、敷金など、賃貸借をめぐるお金について概観してみます(賃料、共益費を除く)。
 すなわち、敷金(保証金)、礼金、敷引き、更新料などです。

 敷金は、賃料を担保(賃料を延滞した場合、その分を敷金から差し引けるということ)、(建物を毀損するなどの)損害賠償の担保のために、契約時に家主さんに預けるお金で、退去時には問題なければ原則として返ってくるお金で、問題の中心となるところです。保証金という場合も同じ意味です。
 礼金は、賃貸借設定の謝礼等のために、契約時に家主さんに支払いきりになるお金です。最近は礼金として受領されることは少なくなっていますが、解約時に、敷金から自動的に引かれる金額(解約引き敷引き)は実質的には礼金であると考えられます。
 更新料は、例えば2年毎に更新する際、1か月分のお金を支払うなど、これも、礼金と同様、賃貸借継続の謝礼等のために徴収される金額です。

 これらについては、賃借人が、通常、平成13年から施行されている消費者契約法に言う「消費者」であることから(逆に言うと、法人が借りている場合は、この法律の適用はありません。)、同法10条の、消費者の利益を一方的に害する条項の無効とする規定、の適用があることが大きいです(ただし、消費者に一方的に不利なら全て無効ということではなく、その程度が、民法1条2項の「信義則」に反するくらいであることが必要になります)

 以下、裁判所がどのように言っているかを、上記のお金ごとに概観してみます(なお、同種の判決は多数出ています)。
 まず、更新料については、平成23年の最高裁判決は、「更新料が高額過ぎなければ有効」とし、1年ごとに賃料2か月の更新料を認めていますが、これは上限だと思います。高裁では無効とした判決もあります。
 礼金(解約引き)については、平成23年の東京地裁判決が、信義則に照らして無効としましたが、逆に、相当と認められる金額(例えば、1か月分)なら、有効とされる余地はあると思います。
 敷金については、平成17年の最高裁判決が、「賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化または価値の減少を意味する通常損耗(つうじょうそんもう)に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払いを受けることにより行われている」として、通常損耗については原状回復義務を負わず、これを負わせるには特約が必要(ただ、これについても、消費者契約法10条が適用されると思われます。)、としました。
 なお、ここでの損耗については、例外的に原状回復義務を生じる特別損耗であることについて、家主さんの方で明らかにしてもらわなければいけない(前後の写真で示すなど)とされています(難しい言葉で、「主張・立証責任」が家主さんにある、と言います)

 これらの判決の結論を、最初の例に当てはめてみます。
<敷金5か月分、解約引き3か月分>の場合です。
 解約引きは、実質礼金ですので、上記の23年の東京地裁判決からは、全部無効とも主張しえますが、賃料の額も考慮し1~2か月分は(信義則上)有効と考えられるように思います。
 そして、実質的な敷金は2か月分になりますが、これは敷金としては平均的な金額です。賃料の延滞がないとして、通常損耗について責任を負う特約(内容が具体的かつ信義則に反しないこと)のあることまたは特別損耗であることを、家主さんが主張・立証されないかぎり、2か月分からの減額はない、ということになります。
以上より、上記の場合、上記のような特別なことが無い限り、敷金の3か月分の返還は求めてもよいと思います。

 で、2か月分の返還を快く認めてくれたら、認められてもよいと思いますが、1か月分しか認めないということなら、3~4か月分を請求してもよい、と思います。

 当事者間(管理会社が間に入っている場合も多いでしょうが。)で埒のあかない場合は、弁護士に相談され、内容証明で請求してもらわれるといいと思います(この問題は、先人達のおかげで、上記のように判決が多数でていますので、弁護士を通じての交渉で解決する場合が多いです。交渉で解決しない場合は、民事調停などになります。解決手段については、詳しくは個々の弁護士まで)
 費用は、実費別で、回収額の12~15%くらいだと思います。個々の弁護士に相談してください(私は、もともと家主さんが返還を認めていた金額については1/3、増加分は1として「経済的利益」を出します。費用についても、詳しくは個々の弁護士まで)kik(当ブログはペイレス・イメージズから写真の提供を受けています。) f:id:lawyer-k:20150324180235j:plain

▼次に気になる商品・お店などを紹介させていただきます(最後の方の広告は、私は関与してません^^)

 

穂積陳重著『法窓夜話』の完全オリジナルコミカライズ! 古今東西の法律小話全100話のうち1~10話まで収録, 1話ごとに4コママンガと原文テキストが両方読めます、とのことです。コミックだけではないのですね。少しでも法律に愛着を持てれば…でも、私はKindleを持っていないので、そこからです^^;でも、Kindleって一杯種類があり、しかも、家電量販店でさわれないので、いつも、家電量販店で店員さんをいじりながら買う私としては、困った…